異本五 中空に

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昔、男、ある人に忍びてあひ通ひければ、かの男に、ある人、

中空に立ちゐる雲のあともなく身のはかなくもなりぬべきかな

現代語訳

昔、男が、ある女に忍んで逢って通っていた所、その男に、その女が、

中空に立ちゐる雲のあともなく身のはかなくもなりぬべきかな

(空の中ほどに立っている雲が跡形もなく消えてしまうように、私の身も消えてしまいそうに思いますよ)

語句

■中空 空の中ほど。 ■ある人 前に出てきた「ある人」と同格で、件の女のこと。

解説

人目をしのんで逢っている男女。のっぴきならない事情があるようで、お互いにこんな関係続けれてちゃダメだ。いつかは破局する。でも…という葛藤があるのでしょう。六十五段「在原なりける男」を思わせる設定です。

「中空に…」の歌は二十一段に一部言葉を変えて登場します。

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朗読・解説:左大臣光永


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