百二十五 つひにゆく道

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原文

訳+解説

むかし、男、わづらひて、心地死ぬべくおぼえければ、

つひにゆく道とはかねて聞きしかどきのふけふとは思はざりしを

十輪寺 在原業平の墓(京都市西京区大原野小塩町)
十輪寺 在原業平の墓(京都市西京区大原野小塩町)

現代語訳

昔、男が病気になって、死にそうに思ったので、

最後には誰もが逝く死の道とはかねてから聞いていたが、まさか昨日今日のこととは思わなかったなあ。

語句

■「つひにゆく…」 在原業平辞世の歌とよめる。業平は元慶4年(880年)5月28日、56歳で没した。「道」は誰もが最後には逝く死の道。

解説

『伊勢物語』は元服式を終えた若者が古都・奈良でうら若い姉妹に恋をする初段にはじまり、死を予感するところで幕を閉じます。

「まさか昨日今日とは思わなかったなあ」…辞世の句らしからぬ、淡々とした歌いっぷりですが、そのことがむしろ、死に面した男の感慨をリアルに語っています。

さまざの恋に奔走し、泣き笑いにあけくれ、旅から旅に渡り歩いた男の生涯も、ここに終わります。記録によると業平は元慶(がんぎょう)4年(880年)に薨じました(『日本三代実録』)。

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