異本十二 夕月夜
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昔、男ありけり。わりなきことを思ひて、ある所へいひやりける、
夕月夜あか月がたの朝かげにわが身はなりぬ君を恋ふとて
とありけれどいとかたくなりにけり。
現代語訳
昔、男があった。とても手の届かない相手のことを想って、ある所へ歌を贈った。
夕月夜あか月がたの朝かげにわが身はなりぬ君を恋ふとて
(夕月夜の明け方の朝日に照らされる影のように、私はうっすらと影薄くなってしまいました。あなたを恋するあまりに)
語句
■わりなきこと 無理なこと。ここではとても手の届かない女のこと。 ■夕月夜 夕方の早い時間に月が出ること。早い時間に月が出るので朝、月が沈むのも早い。早朝はもう月の姿はなく、朝日はまだのぼりかけで、したがって、この歌にあるように影もうっすらしている。十五夜より前十日あたり。枕詞としての「夕月夜」は「暁闇(あかときやみ)」「をぐら」「入(い)る」にかかる。
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朗読・解説:左大臣光永