異本七 春の日の

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昔、男、平城(なら)の京にあひ知りたる人とぶらひに行きたるに、友だちのもとには消息(しょうそこ)をばせで、うらみて文(ふみ)をばやらざりける人のもとに、

春の日のいたりいたらぬ里はあらじ咲ける咲かざる花のみゆらむ

現代語訳

昔、男が、奈良の都に見知っている人を訪ねて行った所、その友達のもとには今から行くよという連絡はしないで、自分のことを恨んで手紙をよこさなかった女のもとに、

春の日のいたりいたらぬ里はあらじ咲ける咲かざる花のみゆらむ

春の日が里によって届いたり届かなかったりする、なんてことはありません。どの里にも、春の日は等しく降り注ぎます。それなのに花が咲く里もあれば咲かない里もあるようですね。

解説

前半が意味不明です。難解すぎて脳から血が出ます。人物関係がサッパリつかめません。私は以下のように解釈しました。昔、男が奈良の都に見知っている女を訪ねていった。この女を女Aとします。

しかし、男は女Aには「今行くよ」的な連絡をする一方、女Aの友達である女Bのもとへは消息…連絡をしなかった。それは、男が何らかの理由で女Bを恨んでいた事情があったため、女Bのもとへは文を送らなかったのだが、男が、その恨みに思っている女Bに歌を送って、

春の日のいたりいたらぬ里はあらじ咲ける咲かざる花のみゆせむ

春の日が里によって届いたり届かなかったりする、なんてことはありません。どの里にも、春の日は等しく降り注ぎます。それなのに花が咲く里もあれば咲かない里もあるようですね。

ここで「春の日」は男です。男は、自分の愛情はどの里にも等しく降り注いでいる。しかし、花のほうで受け入れてくれない場合がある。そうなるともう、どうにもならない。

つまり、私が訪ねていかないのは、キミのせいだよと、女Bに対して言っている…そういう話だと私は理解しています。

人物関係はさまざまな解釈ができる話ですが、ようは男が開き直ってるわけです。キミの所へ行かないのは、キミに理由があるんだよ。私が不実なせいではないよ。よおく胸に手を当てて考えてみな、といった感じで。

朗読・解説:左大臣光永

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