百十二 須磨のあま

むかし、男、ねむごろにいひちぎりける女の、ことざまになりにければ、

須磨のあまの塩焼くけぶり風をいたみ思はぬかたにたなびきにけり

現代語訳

昔、男が、親しく情を通わしていた女が、他の男になびいてしまったので、

須磨の漁師が塩をつくるために海藻を燃やす煙が、風が激しいために思わぬ方向にたなびいてしまう。そんなふうに貴女の心も、あらぬ方向に行ってしまったのですね。

語句

■ことざま 他の男になびいてしまった。■「須磨のあまの…」 「塩焼くけぶり」は塩を生成するため海藻を焼く時に出る煙。「風をいたみ」は風が激しいので。

解説

男が、女の心変わりを嘆いた歌です。須磨の漁師が塩を焼く煙がすーっと風に流されていく。そんなふうにお前も、他の男になびくんだねという歌です。

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