四十八 人待たむ里

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むかし、男ありけり。馬のはなむけせむとて、人を待ちけるに、来ざりければ、

いまぞしるくるしきものと人待たむ里をば離れずとふべかりけり

現代語訳

昔、男がいた。旅立つ人に餞別の宴を開いてやろうと待っていたが、来なかったので、

今こそ思い知りました。来ない人を待つのがこんなにも苦しいと。だから、男の訪れを待っている女の家は、合間を空けず訪ねてやらなければいけませんね。

語句

■馬のはなむけ 餞別。 ■「いまぞしる…」 「人待たむ里」は、男の訪れを待っている女の家。いまこそそういう女たちの気持ちがわかった、という意味。「離(か)れず」合間を空けず。

解説

地方官として赴任する人に餞別するため、餞別の宴を用意したのです。しかし、肝心の当人が、なかなかあらわれない。どんなに盛大に送り出してあげようと思っていた主人は、そわそわします。

ああ待ち遠しい。待ち遠しい。つらいなあ。待つのはこんなにもつらいものか。待てよ。そういえば私も昔、女を待たせたことがあったなあ。あの時、こんな切ない気持ちだったのか。悪いことをした。もっと間をおかず、訪ねてやるんだったという話です。

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