異本十 月しあれば

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昔、男すずろなる所に行きて夜あけてかへるに、人々いひさわぎければ、

月しあればあらはむことも知らずして寝てくるわれを人やみつらむ

現代語訳

昔、男が何となく心惹かれる所に行って夜が明けてから帰ろうとした所、男が一晩過ごしたその家の人々が色々言って騒いだので、

有明月が明るいので洗うように私の姿がはっきり照らし出されたことに私は気付かずにいた。そのせいで、一晩寝て帰っていく私の姿を家の人が見つけたのだろう。騒がれるはめになってしまった。

語句

■すずろなる所 何となく心惹かれる所。 ■人々いひさわぎれれば 男が一晩通ったその家の人々がいろいろ言って騒いだ。思いがけない男が訊ねてきて、しかも早朝に帰るのではなく、夜が明けるまで家にいたので家の人々に発見されたのである。

解説

女の元に、男が来て一晩過ごした。翌朝、すっかり寝過ごして、日が昇ってしまった。ふつうは男が来たら暗いうちに帰るのに、日が昇る時間までいたので女の屋敷の侍女などに姿を見られてしまい、ワアワア言われることになった。まいっちゃったよという話です。

朗読・解説:左大臣光永

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