異本七 春の日の

昔、男、平城(なら)の京にあひ知りたる人とぶらひに行きたるに、友だちのもとには消息(しょうそこ)をばせで、うらみて文(ふみ)をばやらざりける人のもとに、

春の日のいたりいたらぬ里はあらじ咲ける咲かざる花のみゆせむ

現代語訳

昔、男が、奈良の都に見知っている人を訪ねて行った所、その友達のもとには今から行くよという連絡はしないで、自分のことを恨んで手紙をよこさなかった女のもとに、

春の日のいたりいたらぬ里はあらじ咲ける咲かざる花のみゆらむ

春の日が里によって届いたり届かなかったりする、なんてことはありません。どの里にも、春の日は等しく降り注ぎます。それなのに花が咲く里もあれば咲かない里もあるようですね。あなたは春の日である私を受け入れて、花を咲かせてほしいと思います。

語句

朗読・解説:左大臣光永

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