百二十二 井出の玉水

むかし、男、ちぎれることあやまれる人に、

山城の井出の玉水手にむすびたのみしかひもなき世なりけり

といひやれど、いらへもせず。

現代語訳

昔、男が、結婚の約束をしていてその約束を違えた相手に、

山城の井出の玉水を手ですくって飲もうと頼みにしていたのに、破れてしまった二人の関係ですね。

と言いやったが、返事もしない。

語句

■ちぎれることあやまれる人 「あやまる」は違える。夫婦になろうとの約束を違えた人。 ■「山城の…」 「山城の井出の玉水」は京都府綴喜(つづき)郡井手町を流れる清水。木津川に注ぐ。「たのみ」は「手飲み」と「頼み」を掛ける。

解説

男が結婚の約束をしていたが果たさなかった女に送った歌です。山城の井出の玉水を、手に結んですくいあげて、手で飲んだように、あなたを頼みにしていたのに、そのかいもなかった。恨み言を言っているのです。

「手ですくって飲む」の「手飲み」と「頼みにする」の「頼み」にかけます。井出の玉川は、京都府綴喜郡井出町を流れる玉川で、ごく細い流れですが、現在でもとても清らかです。

同じく『伊勢物語』に描かれた川でも、竜田川は汚いドブ川になっていてガッカリですが、玉川は感激します。訪れる機会があれば、ぜひ川沿いをぶらぶら散歩してみてください。

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