七十三 月のうちの桂

むかし、そこにはありと聞けど、消息(せうそこ)をだにいふべくもあらぬ女のあたりを思ひける。

目には見て手にはとられぬ月のうちの桂のごとき君にぞありける

現代語訳

昔、その場所にいるとは聞くのだが便りさえ書き送ることができない女のことを思って、男が詠んだ。

目には見えるが手に取れない月のうちの桂のような貴女ですよ

語句

■いふべくもあらふ いうことができない ■あたり 身辺。

解説

その人の居場所はわかっているが、逢うことも文を贈ることもできない。月の桂のようなあなた。切ない歌です。69段からの流れから見て、相手は伊勢の斎宮と見れます。この歌は『万葉集』の湯原王(ゆはらのおおきみ)の歌をもとにしています。

目には見て手には取らぬ月の内の
桂のごとき妹をいかにせむ

つれない女を恨む男の歌です。これも前段と同じく、万葉集の歌を少し言葉をもじって詠んでいます。

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