五十五 言の葉

むかし、男、思ひかけたる女の、え得まじうなりての世に、

思はずはありもすらめど言の葉のをりふしごとに頼まるるかな

現代語訳

昔、男が、懸想した女と、もはや手に入れることができない関係になって、

貴女は私のことなんかもう思い出さないかもしれないですが、私は
あなたがたまに言葉をかけてくださるごとに、もしや昔の関係に戻れるのではと、期待してしまうのです。

語句

■世 男女の関係。 

解説

かつて親密に情をかわしていた女が、しかし何かの理由ですっかり疎遠になり、関係が絶えてしまったのです。それでも、諦めきれない、思い出すんです。

親密だった時交わした、優しい言葉。愛情に満ちた言葉。いちゃいちゃしたこと。今が、疎遠になって、関係が途絶えているがゆえに、なおさら思い出す愛の言葉の数々を、ああ未練だ、執着だと思いつつ、思い出しては頼りにせずに、いられないのです。この段も、業平と二条后高子の話だとする説もあります。

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