三十四 つれなかりける人

むかし、男、つれなかりける人のもとに、

いへばえにいはねば胸にさわがれて心ひとつに嘆くころかな

おもなくていへるなるべし。

現代語訳

昔、男が冷淡な女のもとに、

口に出して言おうとすれば、言えない。言わないでいれば胸さわぎがする。心ばかり嘆いているこのところですよ。

臆面もなくよく詠んだものである。

語句

■つれなかりける人 「つれなし」は冷淡。無情。冷淡な女。 ■「いへばえに…」「言えば・えに」。「えに」は動詞「得(う)」の未然形+打消の助動詞「ず」の古い形の連用形。 ■おもなくて 臆面もなくて。

解説

つれない相手に対する、モヤモヤした気持ちを歌っています。具体的な状況はなにも記されていませんが、それだけに共感しやすい、こんな状況あるよなと思える段ではないでしょうか。

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